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消防の教科書~消火活動の10原則【後編】~
こんにちは建二です。
前回の更新からかなり時間が経ってしまいましたが、また改めて更新していきたいと思います。
前回は~消火活動の10原則【前編】~ということで先着隊、降着隊の部署位置や、水槽付きポンプ自動車の水利部署について5つの原則を紹介しました。
今回は、火災の規模や活動についての原則を5つ紹介していきたいと思います。
⑥火炎認知の有無に関わらず水利部署をする。
前回に引き続き6つ目は「火炎認知の有無に関わらず水利部署をする」です。
「炎も煙も確認できないからとりあえず現場を見に行こう」
と、思いがちですが、火炎が認知出来なくても必ず水利部署はしましょう。
「消防隊が現着前に初期消火が成功した」
という情報が入っていても通報内容が誤っていたり、仮に成功していたと思っていても再燃するかもしれません。
気づかないうちに建物内で延焼が拡大していたとしたら、水利部署をあらかじめしておかないと活動に大きな遅れが出てしまい、最悪の場合被害が拡大してしまうかもしれません。
なので、火炎が確認出来なくても必ず水利のある位置に車両を部署しておきましょう。
活動人員に余裕があれば警戒筒先を配備しておくのも良いと思います。
⑦火点建物及び周辺建物の人命検索と避難誘導を優先する。
火災現場での活動で延焼防止を重点的に考えて活動をするのは良いことですが、延焼防止よりも大切なことがあるのですが分かりますか?
「人命救助」です。
出火建物は特にそうですが初期の火災でない限り建物内での延焼を阻止することは大変困難です。
なので、建物内にまだ延焼していない場所に人が残っている場合は避難誘導を優先させることが要救助者や死傷者を出さないようにするために大切です。
また、情報聴取などによる要救助者数と要救助者の居場所の把握も活動をする上でしておかなければなりません。
まだ避難出来ていない人がいる事が判明して屋内進入が可能な状態であれば積極的に屋内進入をして人命検索をする必要があります。
⑧消火活動は周囲建物への延焼防止に主眼を置く。
先ほども説明しましたが初期の火災でない限り出火建物自体の延焼を阻止することは大変困難になります。
最盛期となるとどんなに消防車両が集まっても建物内の延焼を阻止することは出来ないでしょう。
私たち消防職員は火災による被害を最小限にするために出火建物への放水をし続けるのではなくある程度のところで見切りをつけて周辺建物への延焼防止を重点的に行う必要があります。
被害を最小限にするためにはどうしたらいいかを冷静に判断出来るように考えながら現場活動するうようにしましょう。
⑨燃焼実態の特性を考慮した活動方針(戦術)により消火する。
「ただ燃えているものに放水をする」という活動では効率的な消火活動は出来ません。
建物火災でも木造住宅であれば屋根が燃え抜けて煙が排出されますが、耐火性能の高い建物になると煙が排出されにくいので活動障害になります。
場合によっては噴霧注水やブロアーなどを活用して排煙をすることも考えましょう。
また、煙が排出されにくいということは密閉度の高い建物とも考えられます。
フラッシュオーバーやバックドラフトの発生も視野に入れておく必要があります。
あとは、燃焼実態(燃えているもの)が何なのかを冷静に判断して効果的な消火活動をしましょう。
例えば出火建物の屋外のプロパンガスのゴム配管が熱によって破けてそこからガスが噴出して燃焼現象を起こしているとしましょう。
燃焼しているガスに放水して冷却消火をしようとしても周りの火源を除去できなけれればガスは供給され続けるので再燃してしまいます。
この場合2つの消火方法が考えられます。
1.ガスの周りの火源を無くす(冷却消火、除去消火)
2.ガスの供給を遮断する(除去消火)
1番のガスの周りの火源を無くすは、ガスの周りの炎を消すか、燃えているものを取り除くかの選択になりますが、周りの炎を消すのはガス自体が燃焼しているので再燃の可能性大。
燃えているものを取り除くのはこの場合建物が燃えているので取り除くのは困難となります。
2番のガスの供給を遮断するは、ボンベや調整器についているコックやバルブを閉めれば遮断する事が可能です。
この2つを精査すると2番を選択して活動する事ができます。
このように現場の状況、燃焼実態を冷静に判断してより効果的な活動が出来るように思考を巡らせるようにしましょう。
⑩初期の小規模火災は、火災室に進入して一挙鎮滅を図る。
先ほどは「出火建物の延焼を阻止するのは困難」とお話ししましたが、それは中期以降の規模が広がってしまった火災の場合です。
今回はまだ建物の一部又は一室のみが燃えている小規模な初期火災の場合です。
初期火災に対しては消防隊1隊でも水利部署をして放水ができる状態になっていれば消防力が優勢なことが多いです。
しかし、屋外から放水をし続けているとどうしても火点に対する有効注水できずに延焼してしまう可能性が高いです。
そのため初期火災の場合、屋内進入をする際の危険の要因もかなり少ないため積極的に屋内進入をして火点に直接放水をして一挙鎮滅をすることが被害を最小限にするために必要になります。
今回は消火活動の10原則【後編】ということで、消火活動をする上で大切な内容を5つ紹介させて頂きました。
次回の題材は「屋内進入」を予定しています。