消防の教科書~放水器具と注水について(前半)~
みなさんこんにちは、健二です。
消防の教科書シリーズ第2弾です。
前回は消防の消火活動の目標と効率的な消火活動を遂行するにはなにが必要かを書いていきましたが、今回からはその目標と効率的な消火活動にコミットするために必要な知識を基本から書いていきます。
今回は『放水器具と注水について』です。
放水器具に関しては経験の浅い方や未経験の方へ向けた基本的な説明しかしていないため、注水に関する知識のみを見たい方は後半を読んでください。
放水器具
放水器具はその名前の通り水を出すための器具で、大きく分けてホースと筒先に分かれます。
ここでは消火活動で主に使用する代表的なものを紹介していきたいと思います。
消防ホース

消防ホースの部位について
まず最初に紹介するのは消防ホースです。
消防ホースはジャケット、ライニング、保護布、金具と呼ばれる部位でできています。
聞きなれない言葉だと思いますがライニングというのは裏地のことです。
消防ホースに限った話ではないですがホースは水を通すため透水性の無い物質で作らなくてはなりません。
消防ホースではライニングは主にゴムを使用しています。
ジャケットというのはホース本体のライニングの外側の部分にある布のことをいいます。
ゴムでできているライニングは摩擦に弱いためそれを保護しているものだと思っていいでしょう。
ただ、ジャケットで保護されているといっても充水されて圧力のかかったホースは尋常じゃなく摩擦に弱いため不用意に引きずると即効で穴が開きます(笑)
※ホースに穴が開くことを消防では「バースト」といいます。
保護布は金具の直近に目立つ色(写真では黄色)で補強されている布です。
ホースを延長していって金具を取り付ける際に日本の消防は金具の元を踏みつけて接続するため、摩耗を防ぐために補強されています。
また、基本的に資機材を踏みつけるのはNGですが、消防ホースではこの保護布の部分だけは足で踏みつけて押さえていいと消防学校で教わると思います。
最後に金具です。
金具とはホースとホースとを結合するための部品ですが、大きく分けてマチノ式金具とねじ込式金具の2種類があります。
ここで載せている写真の金具はマチノ式でメス金具内にあるツメがオス金具の窪みにはまることで結合されます。
ねじ込み式はねじを回すように結合します。
ペットボトルや瓶の蓋のようなイメージです。
消防ホースの径・長さ
消防ホースの口径は
40mm
50mm
65mm
75mm~400mm
と様々ですが、特殊な災害でなければ主に使うのは40mm、50mm、65mmの3種類でしょう。
また、長さについては20mのものが主に使われています。
(写真のホースは65mm×20mです。)
筒先
筒先の基本形
筒先とはホースの先端に結合して放水をコントロールする資機材のことをいいます。
基本的には管鎗とノズルと呼ばれる部品に分かれていますが管鎗とノズルが一緒になっているものや特殊な筒先もあります。

管鎗とは水が通る柄の部分で放水時にはここを握って取扱いをします。
ノズルは管鎗の先端に取り付けるもので用途によって使い分けます。
写真右のスムースノズルは棒状の力強い放水(ストレート注水)ができるため放水距離を長くとることができ、写真左の噴霧ノズルは棒状注水から広角の噴霧注水、そしてノズルで放水の停止もできるためスムースノズルに対して放水のコントロールがしやすい資機材になっています。
また、この管鎗とノズルはねじ込み式で着脱が可能になっています。
取り回しがしやすい筒先

効率的な消防活動をするために筒先も商品開発がされています。
放水時の強い反動を軽減するために、管鎗の一部が曲がった形をしている無反動管鎗もそのうちのひとつです。(写真右)
この無反動管鎗の先端についているのはダブルコントロールノズルといって噴霧ノズルの機能に加えて手元で放水の流量もコントロールできるようになっています。
※ちなみに無反動管鎗は全然無反動じゃないです。反動はがっつりあります。(笑)
最近ではガンタイプノズル(写真左) と呼ばれる資機材が多く流通していて、これからの日本の消防の筒先はこのガンタイプノズルが主流になっていくでしょう。
ガンタイプノズルの特徴としては銃のような取っ手が付いたり、小型化、ダブルコントロールノズルの機能に加えて放水の「ON,OFFレバー」が付いたことによる取り回しのしやすさが特徴でしょう。
特殊な筒先

ここではフォグガンとアプリケーターノズルの2つを紹介させていただきます。
使用用途は図の通りですがアプリケーターノズルは破壊器具としても使用できます。
例えばですが、壁を突き破ってその中に注水するようなイメージです。
もちろんここで挙げた放水器具の主な使用用途は消火活動ですが、時にドクターヘリが地面が砂のグラウンドに着陸する際に粉塵の飛散を防止するために放水することもあります。