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消防を取り巻く環境の変化と「広域消防運営計画」
こんにちは、広域消防組織の消防士に拝命されて4年目になります。健二です。
みなさんは「広域消防運営計画」というものを知っていますか?
現在日本には災害対応をする公的な機関は自衛隊、警察、消防とありますが
自衛隊は国単位
警察は都道府県単位
消防は市町村単位
と、消防は災害対応する機関の中で各組織(各消防本部)が最も小さい単位の市町村になっています。
理由としては、日本の地理・地形の特性上、市町村ごとに川や山、海などの自然の特性、高速道路や工業団地、高層建物などの人工的な特性が各市町村によって違ってくるため災害対応の方法が少なからず変わってくるという理由から消防組織は東京消防庁を除いて市町村単位での運営となっていました。
しかし、近年日本における消防を取り巻く環境の変化(文明の発展や消防に対する国民のニーズの変化)から、市町村単位では対応の難しい災害や、カバーしきれない量の災害の発生等が原因により消防組織の広域化が進められています。
今回は消防を取り巻く環境の変化と市町村の消防の広域化によって期待できる効果(メリット)について書いていきたいと思います。
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消防を取り巻く環境の変化と広域化の必要性
近年、各種の災害の大規模化や複雑化が進み、また、国民保護や救急の高度化などの消防に対する新たな期待が生まれたりニーズが高まってきているなど、消防を取り巻く環境は急速に変化しており、消防はこの変化に的確に対応しその力を十分発揮できる体制を整えていく必要があります。
しかし、小規模の消防本部においては一般的に必要体制、保有する消防車両や専門的な人員の確保をするには限界があることや、組織管理や財政運営面での厳しさが指摘されているところがあります(単独市町村ではその市町村の予算のみで職員の給料や設備を整える必要があるため)。
消防の体制は必ずしも十分でない場合があるということです。
また日本の総人口は平成17年から減少に転じていて、今後も将来人口は減少し2040年には現在の人口より約1割以上も減少すると予想されています。
これにより一般的に各消防本部の管轄人口の減少と、これに伴って消防本部そのものがますます小規模化すると考えられます。
さらに消防職員とともに地域の消防を担っているている消防団員の減少も考えられます。
このような現状を考えると市町村の消防の体制の整備及び確立を図るためには市町村の消防の広域化をより積極的に推進することが必要となってくるということなのです。
少し難しいように感じるかもしれませんが、個人的主観を交えて要約すると
・文明の発展(高速道路の整備や高層建物の建築)による災害の大規模化と救急の高度化(救急救命士の処置拡大+救急件数の増加)のため消防の組織を整え直していかなければならない。
・小規模な消防本部は予算的に人員・設備を充実させるのが難しい。
・人口減少によって小規模な消防本部はさらに小規模に(さらに厳しくなってしまう)、、、
◎そこで消防組織を広域化(近隣消防本部の合併)をして人員と設備を充実させよう!
ということなのです!
消防の広域化によって期待できる効果(メリット)
次に消防の広域化によって期待できる効果(メリット)についてです。
広域化によって得られるメリットとしては代表的に
・住民サービスの向上
・人員配備の効率化と充実
・消防体制の基盤の強化
の3点が挙げられます。
それで1つずつ説明していきたいと思います。
住民サービスの向上
広域化によりひとつの消防本部が保有する部隊数が増えるため、災害時の初動出動台数が充実するとともに統一的な指揮の下で効果的な災害対応が可能となります。
また消防本部の管轄区域が拡大するため、消防署所の配置及び管轄区域の見直しが容易となり、それによって現場到着時間の短縮等の効果が期待できます。
さらに大規模な災害であった場合広域化前に比べてより多くの増隊できるため、対応できる災害の幅が広がります。
人員配備の効率化と充実
広域化によりひとつの消防本部の職員数が増加するため、主に事務を担当する総務部門や通信指令部門の効率化により生じた人員を住民サービスを直接担当する部門(災害出動や検査に出向する部門)に配置することにより当該部門を増強することが可能となります。
さらに近年著しく高度化してる予防業務や救急業務について担当職員の専門家や専任化が進むことが考えられ質の高い消防サービスの提供が可能となります。
広域化前では人員が少ないがために救急隊の隊員が消防車と救急車を災害によって乗り換えて出動していた場合でも、広域化による人員の増強によって救急の専任隊となってより質の高い活動や出動体制の確保につながるということです。
消防体制の基盤の強化
広域化による財政規模が拡大するため、小規模な消防本部では整備が困難なはしご車や救助工作車などの高度な車両や発信地表示システム等(GPS等によって通報した地点を表示できるシステム)を備えた高機能な指令設備の計画的な整備が可能となります。
設備の充実によってより効率的な災害対応ができるようになるということですね!
また、こちらは職員数増加によって付随してくるものですが、人事のローテーション(人事異動)の設定が容易になったり、単線的な昇進ルートの解消を期待できるなど、組織管理の観点からも多くのメリットが期待できます。
まとめ
今現在、各都道府県によって「広域化推進計画」というものが進められています。
推進計画に定める市町村の組み合わせの基準について、広域化の規模は一般論として消防本部の規模が大きいほど火災などの災害への対応能力が強化されるため「消防力、組織体制、財政規模等で考えると管轄人口の観点から言えば概ね30万人以上の規模を一つの目標とすることが適当である。」とされています。
しかし、市町村は管轄面積の広さや交通事情等の地理条件、日常生活圏や人口密度及び人口減少等の人口動態等の地域の事情をそれぞれ有しているため、これらに対するする十分な考慮が必要であるとされています。
なんでも合併すればいいというわけではないのですね、、、
また、「広域化推進計画」は各都道府県のホームページ等に乗っていますので興味のある方は自分になじみのある地域がどのように計画されているか見てみてもいいかもしれませんね!